サクバルとアムロチビ(2001年5月23日)


昨日の朝座間味へやって来た女性の2人連れは、1泊しただけで今朝のクイーンで帰ってしまった。
大阪から1泊の日程で座間味を潜って帰るって、すごい決断だなァ。
おっと、感心している場合じゃない。

今日は朝から晴れ間が見える。
昨夜の天気予報じゃ「午後から晴れる」って言ってたけど嬉しい誤算。今日は暑くなりそうだ。座間味はこうじゃなくっちゃ。

今日は初日から一緒のOさんが3本のリクエストを入れている。
朝食の後、「痛さん達はどうする?」ってオーナーから聞かれたが今回は何故か二人揃って体調があまり良くない。
「2本潜ってから決める」と返事した。

午前9:30に出る、と言われていたので早々に支度して庭で陽の光を浴びながらスタッフを待つ。
雨上がりで山の緑が美しい。遠くでウグイスが鳴いている。
空は急速に雲が切れて青い部分がどんどんと広がって行く。

座間味はもう夏だ!

いつものように港へ連れて行ってもらい、いつものように体操をしてボートに乗り込むと、オーナーが「あれでも魚や」とボートの直ぐそばに浮いている棒のようなゴミを指差した。 良く見るとゴミなんかじゃない。
尾びれを一生懸命動かして泳いでいる。長さ5cmほどだろうか。細長いヤガラの赤ちゃんのような格好だ。

「おまえ、どっから来たン?」とボートから身を乗り出してオーナーが聞いている。
オーナーの言葉が通じなかったのか、それともシカトしたのか、ゴミは返事をせずにせわしなく泳いで行った。

1本目:サクバル

「ここはサクバルというポイントです」
「砲弾が落ちているので、それで遊びましょう」
オーナーのブリーフィングが続いている。
空は完全に晴れた。海の色が青い。座間味の色だ。
サクバルに入るのは2度目だが、機関砲と砲弾、それと黄色いイソバナの群生しか記憶に残っていない。

ふと気がつくと自分のBCが異様に膨らんでいる。
誤ってインフレータの吸気ボタンが押されてしまったのかと、エアを排気してしばらくするとまた膨らんでくる。
「オーナー! ちょっとBC見てくれない?」
「なんかエアが入りっぱなしになってるみたい」
オーナーに声を掛けてBCを見てもらう。オーナーは直ぐに工具と潤滑スプレーのようなものを持ってきて直してくれた。
ワイフのBCもなんだか気になるのでついでに見てもらう。

そして、
「それでは行きましょうか」
オーナーの声でザブーンとエントリー。

-6mで着底し、チーちゃんを先頭にダラダラと少しずつ深度を下げて行く。
目の前には渓谷に踏み込んだような景観が広がって行く。
夕べ眠りが浅かったせいか左耳に少し違和感を感じる。耳抜きはうまくいっているようだが妙に左の首筋が張っている。

「ウワァ、スゴイ!」
チーちゃんが止まり、ブルーに見えるハナゴイの大群とカスミチョウチョウウオの群れにしばし見とれる。

そのまま進んで行くと見覚えのある機関砲が見えてきた。砲弾もそのままだ。
今日も一緒に潜っているOさんが、懸命に持ち上げようとするが重くてダメだ。
ワイフは最初から一人で持ち上げるつもりは無くてOさんと持ち上げようとしている。何とか持ち上げたようだが直ぐに降ろしてしまった。
「痛さんは持たないの?」って、その様子をビデオで撮っていたチーちゃんが目で言ってきたので、
「やめとくョ」と返事をしてその場を離れた。

今日は透明度が良くなくて20mほどだろうか。遠くが白っぽくかすんでいる。
体側に富士山のような白い模様が特徴のカスミチョウチョウウオが群れている。
谷を越えた向こうの斜面でウミヘビと何かの魚が小競り合いをしている。後で聞いたらウミヘビがこの魚の卵を食っていたのだという。

幾つかの谷を越え、V字の渓谷を通ってゆっくりと移動しながらワイルドな景観を楽しむ。
チョウチョウウオ系があちこちでひらひらしている。
大型のツノダシが色鮮やかに泳いでいる。

すると急に透明度が落ちて前が見えなくなった。
と、思ったのは大間違いでビデオカメラのハウジングが結露して曇ってしまったのだ。
今回はワイフに薦められるままにファンケルの薄い乾燥剤を2枚入れたのだが、役立たずだった。
後でオーナーから「痛さん、これじゃダメや」と、曇らせないコツを色々と教えてもらった。

しかたなくビデオをあきらめてカメでも出ないかと辺りを探してみたがいなかった。

EN:10:26
EX:11:12
潜水時間:46分
最大深度:-18.5m
水底水温:22℃

2本目:アムロチビ

「ツバメウオを見に行きます」
「うんと寄ってバックを青で抜いて撮影してくださいネ」
それを聞いてワイフが
「だって近寄ると直ぐに逃げちゃうんだモン」と不平を言うと
「ここのは幾ら近づいても逃げへんから大丈夫」とオーナー。
半信半疑のままワイフがエントリーしていった。

さっきハウジングが曇ってしまったのでビデオを置いて行こうと思ったら、ボートで水面休息していた1時間ほどの間に結露が取れていたので持って行く事にした。
ジャイアントでエントリーしてボートからビデオカメラを受け取ると-5mの集合場所まで潜降。

晴れている日の浅い海底は水族館の水槽状態。無数の小魚たちがカラフルな装いを競うかのように舞っている。
エダサンゴで覆われた丘をゆっくりと回りこんでゆくと遠めにツバメウオの姿が見えた。想像していたよりはるかに大きい。
先頭を行くチーちゃんがさらに左へと回りこんでゆく。
あちこちにクマノミがいるが誰も注意を払わない。

やがて岩がオーバーハングとなっている所で移動を停止した。
左の岩のそばに3枚編隊のツバメウオ、そしてその岩から離れて右に2枚のツバメウオ。
いずれも人が近づいても逃げるそぶりを見せない。むしろ興味津々といった風でゆったりと舞っている。

左の3枚はチーちゃんとワイフがレンズを向けているので、こちらは右の2枚を狙う。
さっきオーナーから「うんと近寄ってバックをブルーに」とアドバイスを受けているので腕を一杯に伸ばして撮影してみる。
ついでに名前の由来の下から見上げるアングルにも挑戦。
下から見上げたシルエットがツバメに見えることからツバメウオと命名されたという。
が、このアングルは難しい。

場所が空いたので左の3枚を撮りにオーバーハングの下へ潜りこむ。下から3枚を撮ろうと思ったのだ。
が、浮遊物が邪魔してダメだった。

オーバーハングの上へ出てみると、そこはオレンジの乱舞だった。
キンギョハナダイの鮮やかなオレンジが群れているのは壮観だ。

ワイフが寄ってきて「気分が悪いから先に上がるネ」とサインを送ってきた。
ボートは真上近くに見えている。
OKサインを返して、ワイフがエキジットして行くのを下から見守る。

しばらくしてハウジングが曇ってしまったので、こちらもエキジット。

EN:12:17
EX:13:11
潜水時間:54分
最大深度:-10m
水底水温:22℃