西伊豆・田子(たご)へ 1999年7月28日


 7月28日(水)午前10時30分、愛車シビックは西伊豆を目指して横浜を旅立つのであった。

 今週の月曜日から会社は1週間の夏休みに入ったので、予定では月曜日から東伊豆・富戸でダイビングのスキルアップ講習を受けてから、そのまま西伊豆へと向かうハズだったのだが、あいにくと私の右足親指は痛風発作で付け根の関節が嫌な赤紫色に腫れ上がってしまい、講習の予定を泣く泣くキャンセルして今日の旅立ちとなったのである。

 学校は既に夏休みに入っている時期だけど、平日の昼前という事で伊豆へ向かう道路は割と空いている。西伊豆・田子(たご)までのルートは海沿いに熱海、真鶴を経由して伊東から山へ入り、湯ヶ島から仁科峠を越えて宇久須(うぐす)へ降り、西伊豆の海岸線を少し南下する予定。

 横浜を出て1時間半ほどで西湘バイパスのいつも休憩するパーキングに到着。軽くストレッチをして再び走り始める。
時計は既に12時を過ぎている。
「あひるだ」「あ昼だ」
と、昼食の催促をすると隣に座っているワイフが
「少し贅沢しようか」などとつぶやく。
「でも、この辺りじゃ贅沢できるようなトコ無いよ」
「じゃァ、コンビニでお弁当買ってどっかで食べる?」
「………」(沈黙)

 しばらく走って網代の干物屋銀座を抜けた先のドライブインでシビックを止めた。
「前にここで磯定食を食べた事があるからここにしよう」

§   §

 昼食を済ませ「これで夜まで餓死しないな」などと軽口をたたきながら車をスタートさせる。
 
 宇佐美を過ぎ、伊東の繁華街を通り、やがてJR伊東駅を過ぎた辺りで「修善寺」の道路標識に従って右折して冷川峠への山道へ取り掛かる。しばらく2台ほど他の車が前を走っていたが、どこかの保養所の様な所へ入って行ってしまうと、あたりはシビックの快調なエンジン音の響きだけとなった。前にも後ろにも他に車はいない。時折対向車がすれ違う。

 山の中の狭い道をしば~らく走ったら、ようやく下りになった。さらに下って行くと信号のある交差点に出てきた。信号待ちをしていると少し先の方に伊豆スカイラインを走っているとオボシキ車の列が見える。
「あそこが冷川ICだ」
「冷川ICから修善寺までは何度か走った事があるんだよネ」
やっと見覚えのある場所へ出てきて元気百倍。
「次は湯ヶ島方面への左折を間違えなければ良いんだナ」
と道路標識を探しながらゆるゆると走っていると、
「あった! あの標識だ!」

 湯ヶ島方面への左折はかなり鋭角で、左一杯にハンドルを切って入り込んだ。そのまま道なりにだんだんと登りになってくると、道はますます狭くなってくる。
「これじゃ対向車がきたらすれ違えないなァ」
「えぇ? ホントにこの道でいいの?」
人家の間をかろうじて通じているような細い道を走らせながら思わず叫んでしまう。まるで私有地の小道っていう感じの道がうねうねと続いている。
 畑の中の農道のような道を登って行くと、完全な山道になってしまった。対向車も来ない。

 右に左にクネクネと山道のアップダウンを繰り返し、最後にやや道幅の広い坂道を降りきると国道414号線にT字でぶつかった。

 国道414号線を左へ少し南下して、右の脇道を湯ヶ島温泉郷へと入り込むと、いよいよ仁科峠への道へと入って行く。この道も狭い登りがグダグダと続く。精鉱工場を過ぎ山道を登り始めるとザーッと雨が降ってきた。雲が速いスピードで動いている。雨は、直ぐに止んだ。

 やがて仁科峠に到着すると、峠名物、お約束の霧が下から上がってくる。構わずにそのまま通り過ぎて宇久須(うぐす)方面へと右折して、10台ばかり止められる駐車場でシビックを停車させた。車から降りると眼下に宇久須の港が光っている。この辺りは放牧場になっていて、十数匹の牛がノンビリと草を食べている。

§   §

 宇久須までの下りは実に快適な道路が続く。13kmほどの下り道なんだけど、最近整備されたとかで道幅も広いし、「快調、快調」。
 あっという間に海岸沿いの国道136号線にぶつかった。

 ここから今日の目的地「田子(たご)」へはひとっ走り。幾つかのトンネルを抜ければ直ぐだ。