浮島根(フトネ)~沖根(オキネ)、白崎(シロサキ)1999年7月30日


 昨日は寝不足で潜ってメチャクチャ疲れていて、昨夜は夜中の3時過ぎにトイレに起きただけでグッスリ眠った。そのかわりワイフが一晩中エアコン係をやっていて寝不足だそうだ。

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 外は今日も朝からピーカンで、日中は暑くなりそうだ。朝食後、昨日と同じように自分の車で港まで行く。民宿から港までは車だと5分とはかからない。港に着いて一息つくと昨日と同じように1本目のセッティングに入る。

 全員で岸壁からボートへと1本目のタンクを手渡しすると、早速器材をセット。今日のメンバーは学生なのか男ばかりの4人組みと、相模原から単身参加の朝(あさ)さんという男性と、我々夫婦の7名。他にどこかのショップのツアー(若い男の子一人と女の子二人+イントラさん)が同乗する。全員が昨夜「福由丸」さんに泊っていたが、4人組みは「勝手知ったる」といった感じでサッサと支度をしている。朝さんは今回が6本目の超ビギナーで、昨日の我々と同じ状況でウロウロしている。で、見かねて昨日我々が教えてもらったことを同じように彼に伝える。

 支度が整った所でいよいよ今日の1本目へと出発だ。

 今日の1本目は「浮島根(フトネ)」からエントリーして「沖根(オキネ)」でエキジット。2つのポイントを渡る予定だそうだ。同乗したどこかのショップのツアー組みを湾内の弁天島で降ろすと、ボートは田子の湾内を出て快調に飛ばし始めた。昨日より海は穏やかで、うねりが無い。昨日はエントリーでマゴついたので、今日はボートが湾外に出るやワイフを促して器材を背負い始めた。

「ブイを繋いである潜降ロープにつかまって潜降して下さい」
「集合は潜降ロープの下です」
石田さんのブリーフィングの後、4人組みが真っ先にエントリーして行った。
「どうしても一回転しちゃう」というワイフに
「こうアゴを引いてエントリーしてみて下さい」
「絶対にアゴを離さないように」
と、石田さんが身振りで教えてくれている。
「じゃ、1・2・3で二人同時にエントリーして下さい」
「1・2・3」
と、石田さん。
ワイフがエントリーしたのをマスク越しにチラリと見て、自分も入ろうとしたら
「チョット待って」と石田さん。下を見るとワイフが真下に浮かんできた。

 ワイフがどくのを待って、こちらもエントリー。そして潜降ロープを手繰りながら潜降したけど、やっぱり今日も濁っている。もう少し透明度が上がっているかな? と期待していたけどチョッピリ残念である。-19mで着底して朝さんを待つ。全員揃った所でガイドの石田さんを先頭に移動を開始。

 根に沿って-30mまで深度を下げる。このポイントは潮通しが良く、大型の回遊魚がよく回ってくるらしい。(何か大物が出ないかなァ)と時々あたりを見回すが、それらしい影は見えない。それよりもこのあたりの入り組んだ地形の面白い事。この辺で「かくれんぼ」をしたらまず見つからないだろう。ソフトコーラルもたくさん付いているし、これで透視度10mくらいだと思うけど、もう少し抜けていると違った印象になりそうだ。
 見上げた中層をメジナの群れが漂っていた。タカベも群れている。

 いつの間に根渡りしたのか分からなかったが、石田さんが止まった。そして「しばらくここに居ろ」とシグナルを寄越した。どうやら朝さんがエア切れらしい。石田さんに連れられて浮上して行った。今回の田子では残圧70で申告するように毎回ブリーフィングで言われている。しばらく待って石田さんが戻ってきて、また移動を開始。そのままヒマつぶしでもするかのように10分ほどあたりをウロウロしている内に、こちらの残圧が70となり、昨日潜った「沖根(オキネ)」からエキジット。

EN.10:15 EX.10:50 潜水時間:35分
最大水深:30m 水底水温:19度

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 港へ戻って一息つくと、
「昼食にしましょうか」と昨日と同じように石田さん。
 今日はだいぶ勝手が分かっているので精神的なゆとりがある。モチロンあわてて財布を取りに車へ戻ることなどしない。
 さらに「ゆとり」があるせいか、今日が初めての朝さんに近づくと
「これから中華料理屋へ行くんです」
「昼食代は込みだからお金要らないんです」
と、知ったかぶりしてそっと耳打ちする。

 昨日と同じ中華料理屋さんに入ると、五目ソバを注文した。ワイフはさんざん悩んだあげくヤキソバを注文。石田さんは夕べのTVの番組で見た「カレー南蛮」と「タンタンメンだか何だか」とどっちにしようか、と、こちらもさんざん悩んだあげく全然違うメニューをオーダーして爆笑をかっていた。

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 食後のけだるい時間を炎天下で過ごし、2本目の準備に入る。ボートから1本目で使ったタンクを手渡しで降ろすと、今度は逆に2本目のタンクをボートへ乗せる。でも、こういう作業もダイビングの内なのである。みんなでやれば楽しくできる。
 そうそう。今回利用させてもらっているフリッパーさんは「自主性」を重んじるサービスだ。至れり尽くせりの日本流より、どちらかというと本で読んだアメリカンスタイルに近いので、「自主性」を持って潜りたい向きにはお勧めである。「ガイドは道案内、楽しむのはあなた」なのである。

 さて、2本目は4人組みのリクエストでエダサンゴの群生で名高い「白崎」へと向かう。「白崎」は田子港の防波堤の直ぐ外のポイントである。

 あっという間にポイントへ到着して、ドボドボとエントリー。ここでもやはりブイを繋いでいるロープ伝いに潜降した。しかし-4mで着底したが濁りがひどい。直ぐに移動を開始したがほとんど透視度3m。それでも見事な緑色したサンゴの群生の上に出た時には、「ウォー」という声が聞こえた気がした。2、3ヶ所このような群生が見られたが、ほとんど茶色に枯れてしまっている場所もあって残念である。

 ひどく濁った中をゆっくりと移動していると長い土管が数本折り重なっている場所へ出た。石田さんが「回り込んで中を見ろ」とシグナルを寄越す。言われるまま回り込んで土管の中をのぞくと入り口に大きなイセエビが居た。また、斜面には小さなミノカサゴがゆたっていた。濁りがあろうが無かろうが彼らはたくましく生きている。

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 白崎のポイントをエキジットして、次におまけのポイント(?)へ連れて行ってもらった。福由丸さん所有の「生け簀(いけす)」である。生け簀といっても深さ12m、口の直径10mはあろうかという超特大の甕(かめ)を沈めたような物である。そして生け簀の中にはマンボウが4枚、カメ一匹、ネコザメ数匹が居るのだという。これが田子の湾内に沈められているのだ。
「残圧10くらいで上がってきて下さい」
なんていう簡単な注意を受けて早速エントリー。「カメは底の方に居る」というのでカメ見たさにワイフと一気に底まで潜降してみたが、いない。替わりに1m以上のネコザメが出迎えてくれた。さらに底をぐるりと一周してみたがやっぱり居ない。仕方ないので少しずつ深度を上げながらグルグルと渦を巻くように潜泳していたら
「アッ! カメだ!」
ついに見つけた。甲羅に海草をたっぷりと生やしたカメがあわてて上へと逃げて行った。
 カメを追いかけるのはあきらめて視線を横に移すと、目の前にマンボウが4枚揃っていた。

EN.13:45 EX.14:47 潜水時間:62分
最大水深:23m 水底水温:22度