「はいむるぶし」へ 2001年8月24日


午前4時、空が白みかけてきた頃ベッドを抜け出しシャワーで目を覚ます。
いよいよ今日から3泊4日の旅に出る。と、言ってもいつものダイビング旅行であるが、今回は息子達も一緒の恐らく最後であろう家族旅行なのだ。

シャワーを浴び、自分の荷物を点検すると息子達を起こしてまわる。
「おい、朝だぞ!」
「さっさと起きて支度しろ!」
何年か前からアパート暮らしの長男は昨夜からうちに来ていて、階下のソファーで眠っていた。
三男は一晩中起きていたらしく「オー」と返事をして起きてきた。
ところが次男が部屋にいない。

「おい、一人いないぞ」と、ワイフを起こす。
ワイフが次男の携帯に電話をする。
「あんた今どこにいるの?」
「新横浜、今まで飲んでた」
「早く帰ってらっしゃいよォ」
「う~ん、直ぐ帰る」

「はいむるぶし」は小浜島(こはまじま)にあるヤマハの豪華リゾート施設だ。
石垣島まで飛行機で飛んで、その先は定期船で島へ渡る。
横浜の自宅からだと早朝6時45分発のJAL那覇行きに乗るには足が無くて、今朝は仕方なくタクシーを呼んである。
ワイフとの二人旅だと長男か次男に羽田まで送ってもらうのだが、今回は彼らも一緒に行くのだから仕方が無い。

今日は羽田から那覇へ、那覇からJTAに乗り継いで石垣島まで行き、そこからさらに船で小浜島へと渡る。
小浜島は今年の4月からNHK朝の連ドラ「ちゅらさん」の舞台となっている島で、ミーハーなワイフからのリクエストで決まった。


朝まで飲んでいたツケでフラフラしている次男を連れて、予定通り午前6時前に羽田に到着。
蒼白の次男と家族をトイレの近くに残して一人JALの団体受付へと急ぐ。
今回のツアーは近ツリ主催のフリープラン。
羽田のJAL団体受付カウンターで参加者名簿を見せて搭乗チケットを受け取ると家族のところへ引換し、直ぐに全員で搭乗ゲートを通り抜ける。

と、搭乗ゲートで先ず次男が引っ掛かった。
ピンポン、とゲートの警報が鳴った。
二日酔いの次男が係員に押し戻されて、もう一度ゲートを潜り抜けさせられている。
今度は警報は鳴らなかった。誤作動だったのか。

次にワイフが引っ掛かった。
係員が小さな折りたたみナイフを広げて見せている。
いつもキーホルダーに付けている小さな五徳ナイフだ。
「これ、こちらでお預かり致します」
「ハァ」
「石垣島空港でお渡しするでよろしいですか?」
「ハァ」

係員が書類を作っていると後ろのほうで長男が引っ掛かっている。
(どうした?)と2、3歩近づいてみると係員が黄色いカッターナイフを手にしている。
「この前キャンプに持っていったままにしていた」と長男クン。
「バカだなァ」
こちらもその場で取り上げられて係員が書類を作りかけたので、
「あっ! 家族なのであっちのと一緒にしてもらえます?」
と、ワイフの書類を作っている係員を振り向いた。


搭乗ゲートで起きた小さなドラマを通り抜け、一行は出発ロビーへと歩いて行く。次男クンだけは千鳥足で足元が頼りない。
最近の国内線は機内食のサービスを止めてしまったので、ロビーでおにぎりとサンドイッチの朝食を摂る。
やがてアナウンスに促されてJAL931便の機内へゾロゾロと入った。

那覇までの飛行は着陸時のバウンドを除いて揺れもせず平穏であった。
JAL931便が那覇空港に着陸すると、乗換え時間5分で今度はJTA石垣島行きの搭乗ロビーへと足早に移動。
定刻を少し遅れて我々を乗せたJTA607便は離陸した。
フライト時間55分でJTA607便は石垣空港に滑るように着陸した。
石垣島は4年ぶりになるだろうか?
タラップを降りるとアッという間に全身を南国の熱い空気が包み込んでくる。
今、空港ビルは補修作業中のようで工事現場のような所を通って空港ビルの外へ出た。

そのままタクシーに乗り込み小浜島への定期船が出ている離島桟橋へ行く。
この島のタクシーは初乗りが380円と安い。
390号線を走って10分ほどで港に着いた。

タクシーを降りると南国の太陽がとてつもなく熱い。


タクシーの運チャンに教わった通りに離島行きのチケット売り場カウンターで小浜島行きの乗船チケットを往復で買い、
待合室に手荷物を置かせてもらって時計を見ると11:30を少しまわったところだった。
半日で石垣島に来れるのは近いというべきか、やっぱり遠いのか。
横浜を出てから石垣に着くまでの記憶がほとんど無い次男クンにとっては、まるで瞬間移動だ。
その酔い覚めの彼がしきりと空腹を訴えるので、手近な沖縄そば屋へ飛び込んだ。

とにかく日陰以外は灼熱地獄の中、少し歩いただけで猛烈に喉が渇いてくる。
とりあえず生ビールを注文してから沖縄そばとか八重山そばとかをオーダー。
その生ビールをキューと飲み干すと「待ってました」とばかりにとたんに汗が吹き出してくる。

「ん? ここのソーキそば美味しいよ」
「八重山そばも美味しい」
本場の沖縄そばは初めての三男は早々とスープまで飲み干している。

丁度昼時にかかったせいか、我々が福の神なのか、それほど広くない店がみるみる満席になって行く。
もし、離島桟橋でお昼時になったならこの店は一押しと思う。
離島桟橋から交番の脇を抜けて交差点を真っ直ぐ渡り3分ほど行った左側、島料理「ゆらていく」の暖簾が下がっているので直ぐ分かる。

食事を済ませ港へ戻ると、いよいよ12:20発の小浜島行きの定期船に乗り込んだ。


定期船の快調なエンジン音と適度な揺れ、それに生ビールが掛け合わされると答えは?
そう、ウトウト。

ウトウトとまどろんでいると所要時間30分で定期船は小浜島の港に到着。
NHKのドラマで少女時代の「ちゅらさん」が初恋の少年を見送った長い防波堤を左に見て定期船は港内に入って行く。
港には「はいむるぶし」の送迎バスが待っていて、我々をフロントのあるセンター棟まで無料で運んでくれた。


こうして我々家族は「はいむるぶし」へやって来た。

「はいむるぶし」の敷地はだだっ広い。この広い敷地内の移動にはカートが必需品。
チェックインしたら直ぐに宿泊日数に合わせてレンタルすべし。
足が無いと食事しにセンター棟まで行くにも不自由を感じてしまう。
と、いう訳で我々もチェックインして直ぐに5人乗りのカートをレンタルした。