ダイビングな一日 2001年8月25日


一夜明けて、今日は家族でダイビングの日となった。
といっても、息子たち3人はノンダイバーなので彼等はまったく初めての体験ダイビングに挑戦することになっている。
ワイフと私はファンダイビングに出かける。

「はいむるぶし」には5人部屋が無いので2人部屋+3人部屋を続きで取ってある。
宿泊棟は敷地内に点在していて6室位で1棟の長屋風宿泊棟となっている。
お互いの部屋とは内線電話で連絡が取れる。

「午前7:30に朝食」と昨夜のうちに決めておいたので、今朝は久しぶりに家族揃って朝食のテーブルを囲んだ。
朝食はバイキング形式なので各自好きなものを取ってテーブルに着く。
最近は生活の時間帯が違うので家族揃って朝食のテーブルを囲むことがほとんど無い。
これからダイビングをするので軽めの朝食を摂りながら、話題は自然とダイビングへと移って行った。


体験ダイビングの集合が午前9:00にロビーとなっていたので、我々のダイビング器材を指定場所に置きに来たついでに心配性のワイフと見送りに来た。
やがて迎えのバスがやって来て、彼等は体験ダイビングへと旅立って行った。
そして我々は午前9:30集合のファンダイビングへ出かけた。

午前9:30にやって来た無料の送迎バスに乗って昨日定期船が着いた港で降りる。
岸壁には既にタンクを積んだ漁船風のボートが2隻岸壁に舫(もや)ってあり、そのうちの自分たちの器材が運ばれていた1艘に乗り込んだ。

今日同行するのは、年配のご夫婦の方と5年のブランクがあるという30代と見える男性。
ガイドは山口さんという25歳のナイスガイ。
年配のご夫婦の方が今日で3日目とのことで1本目のポイントは竹富島の南を潜ることになった。
小浜島からポイントまでの所要時間は約30分。
簡単な今日1日のスケジュールの確認後、ボートは1本目のポイント「ミドルブック」を目指して走り始めた。

ボートが港の外へ出た。
見渡す限りエメラルドグリーンに輝く海は少し波があるが穏やかだ。
白い砂地に点々とサンゴの根のある海底がエメラルドグリーンを透かして見える。
空は青。遠くに白い入道雲。
単調なエンジン音が眠気を誘う。


1本目 竹富島・南「ミドルブック」

竹富島からかなり離れた海の真ん中でボートを止め、アンカリングを終えたところで、
「サァー」
と、山口さんが元気良くブリーフィングを始めた。

「ここは竹富島の南、ミドルブックというポイントです」
「ボートの真下が-5mほどの根の頂上で、なだらかな斜面を降りると白い砂地になります」
「エントリーしたらそこで集合しましょう」
「そのまま砂地を向こうの方へ行った所にスカシテンジクダイの大群がゴチャ~と集まっている根があるので、そこまで行きましょう」
「その他にここで見れる魚はァ」とパラパラと図鑑をめくって幾種類かの名前をあげた。
「それでは準備のできた方からエントリーして下さい」

ゆらゆらと揺れるボートの上でタンクを背負うとジャイアントでエントリー。
船上のワイフからビデオと水中カメラを受け取ってワイフのエントリーを待つ。
ワイフはバックロールでエントリーしてきた。

エントリーして下を見ると、ブリーフィング通り直ぐ下にはサンゴに覆われた根があった。
そして少し先の砂地から、一足先にエントリーした仲間がこちらを見上げているのが見えた。

全員揃ったところでガイドの山口さんが動き始めた。
ゆっくりとしたペースでガレ場を過ぎ、砂地を進む。透視度は40m近くある。遠くが明るいブルーに染まっている。
やがて目の前に4~5cmのスカシテンジクダイの大群に囲まれた根が見えてきた。とにかくスゴイ数だ。
根に着くと、早速ブリーフィングで聞いたハダカハオコゼを探しに入る。コイツは良く見ないと回りの色に同化していて見つけられない。
ワイフはイシヨウジを見つけて写真を撮っている。
サンゴの隙間に太い体を押し込んでウツボがこちらの様子をうかがっている。
根と砂地の境を小型のハタの仲間が三匹縄張り争いをしている。

しばらく遊んで山口さんが砂場へ移動した。
結局ハダカハオコゼは見つけられなかった。

次に行った場所はガーデンイールがニョキニョキしている白い砂地だった。
数十匹のガーデンイールが体を目一杯伸ばし流れに向かってゆらゆらしているのが見える。
ビデオを構えながら(ヤツに気付かれないように)と横から砂地すれすれをゆっくりと近寄る。
ネライを定めた一匹にあと30cmという所まで近づいた瞬間、スッと穴に隠れてしまった。
ソイツは穴から目だけを出してジッとこちらを見ている。
手前にネジリンボウがいたらしいのだが解らなかった。

ガーデンイールのいる場所を離れボートへと引き返し始めた時、先頭にいた山口さんが立てひざ突いて右の方向を指差した。
指された方向を見ると、バックのブルーに浮き出るように白く細い魚の群れが横に流れている。体全体が白く、横長に広がって群れている。
その様子は背景の青とマッチしてまるで日本画を見ているようだ。

しばらく日本画の世界を堪能し、ゆったりとした流れに逆らってボートを係留したサンゴの根に戻って行く。
途中の根ではペアのハタタテハゼがチョコチョコと向きを変えながら泳いでいる。
向こうの方の根では「念力でサンゴを動かす!」とか言ってガイドの山口さんが手のひらで起こした水流を何かに当てて遊んでいる。

やがてボートの下まで戻って来たところで自由時間となった。
エントリーした時は気付かなかったが、ノンビリとこの根の回りを漂っているとサンゴがやたらと元気でキレイなことに気付かされる。
白っぽいヘラヤガラがいる。エダサンゴで覆われた斜面をキンギョハナダイが数匹舞っている。
相手を失ったのかセグロチョウチョウウオが一匹、寂しそうに泳いでいる。
サンゴの間を黄色と紺に塗り分けられたソメワケヤッコが駆け抜ける。

エントリー:11時09分
エキジット:12時09分
潜水時間:60分
最大深度:13m
水温:31℃


全員がボートに上がり一息ついたところで
「サァ、これから昼食にします」と、山口さん。
「選択肢が2つあります」
「波の静かなところか、どこかの港に上陸するか…」
ややあって、
「港がいい」と年配の方のリクエストでボートは竹富島の港へ入ることになった。

港の岸壁にボートが横付けされ、島に上陸すると強烈な太陽の陽射しが我々をあぶり始めた。
「その先に休憩所とトイレがあります」
山口さんの声を背中で聞いて、少し離れたところに見える屋根付きの休憩所へと足早に向かった。

お昼は「ほっかほっか亭」のお弁当。
小浜島には大きな弁当屋が無いので石垣島から調達するのだそうだ。
しかし、お菜はどうしても油モノになってしまうのは時節柄仕方が無い。
朝食を軽めにしたのでお腹がすいているのだが、揚げ物とかを食べ過ぎると2本目がつらくなるので、メンチカツだけ残してしまった。

お弁当を済ませて雑談している時にフト気付いたのだが、今回のメンバーの中でガイドの山口さんが一番年下のようだ。
休憩所の日陰を時折吹き抜ける風が心地よい。


2本目 竹富島・南「リトル・クリッチャーズ・ホーム」

港を出てエメラルドグリーンの海をしばらく走ったあたりでボートは止まった。
「サァー」
と、山口さんの元気のよいブリーフィングが始まった。
「ここは、リトル・クリッチャーズ・ホームというポイントです」
「ヨスジフエダイの群れがなついています」
「エントリーしたらボートの下の砂地で集合しましょう」
「帰りは残圧の様子を見ながら、ところどころで遊びながら帰って来ます」
「潜水時間は45分プラスマイナス5分を予定しています」

全員が集合したのを確認して山口さんが動き始めた。
ガレ場と砂場が混じったような海底を見ながらゆっくりとしたペースで進む。
ロクセンスズメダイの群れが小さな根の周りに群れている。
時折吐き出す泡が右耳をくすぐる。
しばらくして今度は左。
あれ? 頭の上もくすぐってるゾ。
今度は右耳だ。

いや、違う。これは泡じゃない!
たぶんホンソメワケベラがクリーニングしているのだ。

ヤメロって!
耳の穴をつつくのだけは!

白砂のアチコチにある根の一つに白い変わったイソギンチャクが付いていた。
山口さんがそのイソギンチャクの表面を鉛筆で撫ぜている。
近寄ってみたらガラス細工のようなエビが乗っていた。
オシャレカクレエビだ。
胴体はほとんど透明で、ハサミとシッポしか良く見えない。

さらに進むと、二抱え位ある石の上から山口さんが呼んでいる。また何か見つけたらしい。
行ってみるとカクレクマノミが付いたイソギンチャクの側を、鉛筆の先で何かやっている。
見ると5~6匹の小さなエビがシャチホコのように尾を立てて逆エビ状態でピクピクやっていた。
こいつは名前が分らない。

次の小さな根には紺と黄色のストライプのウミウシがいた。
そばの砂地にはストライプ(?)のひれを交互に振って、その名の通り踊っているようなオドリハゼがエビと共生している棲家(すみか)の穴で踊っていた。
大きなツノダシが一匹悠然と泳ぎまわっている。

そうこうしているうちに目的の大きな根に着いた。
先ず目に付いたのはヨスジフエダイの群れだ。
我々が近づいても逃げる風でもなく、ノンビリと泳いでいる。
ロクセンスズメダイも群れている。

岩陰から40cm位のヘラヤガラが出てきた。
山口さんが岩の下をライトで照らしている。
行ってみるとハネガイが触手のような物を怪しげに揺れ動かしていた。
直ぐそばのイソギンチャクではセジロクマノミのペアがちょこまかしている。
その隣ではカクレクマノミのペアがこちらもせわしなくイソギンチャクを出入りしていた。

エントリー:14時32分
エキジット:15時31分
潜水時間:59分
最大深度:13m
水温:31℃