東伊豆・富戸(ヨコバマ)



 やっぱり今朝も目覚ましより先に目が覚めた。
 今日は3週間ほど前から予約を入れておいたドルフィンさんへ富戸ダイビングに出かける日なのだ。それもナント今年の初ダイビングになる記念すべき(?)日なのである。昨夜は会社から帰るなり器材の準備を始め、5時起きの6時出発予定で眠りについたのだが、遊びに出る時はいつも早起きしてしまう。

 気がかりだった天気の方も久々の梅雨の晴れ間とかで、かなり気温も上がるとTVの天気予報が告げている。でも、残念なことが一つある。それは今回のダイビングは一人で行くことになってしまったこと。ワイフは悪友(あくゆう)達と箱根へ温泉につかりに行くのでダメ、一緒に行くはずだった仕事の関係の人もダメになった、で、結局一人寂しく出かけることになってしまったのだ。

 それでも午前6時15分、愛車シビックは快調なエンジン音で横浜を出発した。

◇       ◇
1本目

 今日の1本目は、痛さん初めての浅沼さんのガイドで潜ることになった。浅沼さんは今回ガイドをお願いしたドルフィンウエーブさんのHPに載っているスタフ紹介の写真と違ってショート(刈り上げ?)ヘアだったので後ろから見るとまるで男の子のようだ。そのせいか愛称のトッポジージョがまるでピンとこない。

 さて、今回のチーム編成は明らかに痛さんよりもビギナーな女の子達6人と、その中にポツンと痛さんだけ男がひとり。ブリーフィングの時から(ラッキー!)などと思いつつ最後にエントリー。
 ところが潜降ロープ伝いに潜降してガイドロープの終点で集合だったが、最後にエントリーしたはずなのに全員がそろっていない。
(うんうん、あるある。初めのうちってうまく潜降できないンだよネ)
などと思いながら20mは抜けていようかという明るい陽射しの浅瀬で待つことしばし。どうやらガイドの浅沼さん、うまく潜降できずにもがいている何人かを一人づつ引っ張り込んでいるようだ。
 ようやく全員集合して砂場の方へと移動を始めた。

 ブリーフィングで「今日は透明度が良いのでなるべく私の後ろを横に広がってついてきて下さい」と言われたにもかかわらず、我がチームは移動を始めた直後から縦に長い隊列になってしまっている。
(そうかァ、彼女たち海の中で息をするだけで一杯なんだなァ…)
などと考えていたら突然ストップがかかって浅沼さんがダッシュしていった。どの辺まで上がったのかは解らなかったが、割とすぐに一人の女の子の手を引いて戻ってきた。浮いてしまったのか、何かトラブルがあったのかは定かでないが、この時から浅沼さんのバディはブリーフィング時に決められた痛さんから、今、手を引かれて戻った女の子に変わってしまい、浅沼さんはエキジットまでずっとこの子の手を引いてガイドすることになってしまった。

 途中、アオヤガラのヤングやら大きなイネゴチを見ながらゆっくりと砂場の上をアオリイカの産卵床へとやってきたが、卵はいくつか産みつけられてはいるものの肝心なアオリイカの姿が見えない。-20mのここら辺りでも潮の状態が大変良いので、今回のチームは最高のコンディションでアオリイカの交接・産卵シーンを見られるハズだったが、まあ仕方が無い。ガイドの浅沼さん、当然痛さんと同じ思いでここへ連れてきたのだろうが、イカがいないのはイカんともしがたく、ガイドの責任ではない。卵をネラッているミノカサゴとウツボを見せただけでやむなく戻ることにしたようだ。

 それにしても浅沼さん、例の女の子の手を引きながらの道案内じゃ大変そう。とりあえず一番危なそうな子を確保した安心感はあるかも知れないが。

 そして浅沼チームは下の方でモウモウと砂の煙幕を張っている女の子達を引き連れながら岩場へと戻ってきた。砂場と岩場の境辺りではマアジのヤングが群れをなしていた。そして岩場伝いにエキジット場所へと戻ってくると海洋実習のグループが数組実習の真っ最中だった。

◇       ◇
2本目

 2本目はガイドが変わって大柄な大森さん。こちらも女性のガイドである。大森さんのガイドも痛さんは初めてだったので、器材のセッティングだかバラシだかの時にチョット雑談してたらOLからの転職だとのことだった。やたら元気の良い浅沼さんと比べると、まだ遠慮が有るのか少し控えめな感じがする。

 2本目はエントリーしてから右の方へ岩場を伝い、左回りで砂場を回って帰ってくるコース。いつものドルフィンさんのコースだ。今回のメンバーは1本目とガラリと変わって男性中心。今日は痛さんチームは3人で来る予定だったのだが、2人都合が悪くなって痛さん一人でやってきたのでバディはガイドの大森さんということになった。

 そしてエントリー。1本目と同じくガイドロープ沿いにそのまま終点の-4mに集合する。しかし今回もまた集合場所で少し待たされる。(2年前はこの逆だったな)などと思いながら辺りを見回すと、午前中より心なしか細かい浮遊物が多くなっている。大森さんが遅れている人を引きずり込んできた。そして人数を確認して出発だ。

 イソギンチャクの畑を過ぎてなおも岩場沿いに移動を続ける。ヒデさんのガイドだと、ここらでイザリウオとかオコゼとかクマノミとか見つけていたように思うが、今日は通り過ぎてしまった。エントリーでまごついた分、時間が無くなったのかもしれない。

 やがて岩場から左に回り砂地へと降りた。目的地はこの砂地を少し行った先のアオリイカの産卵床。透明度は午前中に比べて明らかに落ちている。それでもこの辺り-15mで透視度10m弱くらいあるだろうか。

 産卵床に着くと、いたいた! 大きなアオリイカが数組、仲良く並んで産卵床の枝のまわりを漂っている。我々2本目のメンバーは、少し離れた場所に着底してそのシーンをジッと見守る。時々メスが枝に突進しては卵を産みつけている。オスは愛しそうにメスの側を離れようとしない。緩やかな潮の流れに流されないように体を固定して、我々はなおもジッと見守る。

 いつも海の中で思うこと。
 (大自然ってすっごいな~)

 5分ほどジッとしていて少し寒くなってきた頃、大森チームはエキジットポイントへと移動を開始した。そして少し抵抗を感じる流れに逆らって砂場を突き抜け岩場へやってきた。
(確かこのあたりでもカサゴなんかが良く見つかるんだよネ)ブクブク
などと独り言をつぶやきながら岩の間なんかを探してみたけど、手のひらサイズのカサゴかオコゼを一匹見つけただけで、他は見つけられなかった。ガイドの大森さん、残圧の少ない人が居たのか、サッサとエキジットポイントへと進んでしまう。カサゴとオコゼってどうも見かけが似てるんで、今度見分け方を教えてもらおう。